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バランスシートの推移を見る場合は、資産をプラス表記、負債をマイナス表記にするので、留意してほしい。
図211が、州政府などを含むアメリカ政府全体の負債残高をグラフ化したものだ。
08年第2四半期までは漸増といったところだが、同年第3四半期、つまりリーマン・ショック以降のアメリカ政府の負債は、まさに激増という表現が相応しいペースで増えている。
わずか1年間で1兆8907億ドル(約170兆円)も増加したのだ。
ちなみに、この原稿を書いている10年1月時点において、アメリカ政府の負債残高は、すでに12兆ドルを軽く突破している。
負債増加のペースが棲むどころか、加速している有様なのだ。
アメリカの会計年度は、ちょうど第3四半期末(すなわち9月)に終わる。
09会計年度、及び08会計年度のアメリカ連邦政府の財政収支は以下の通りだった(図2-2)。
09会計年度における、アメリカ連邦政府の財政赤字が約1兆4170億ドル。
それに対し第二マネーストック、同じ期間に増加した政府全体(州政府などを含む)の負債額は1兆8907億ドル。
負債増加分の7割超が、連邦政府の財政赤字としてフロー(この場合は政府の歳出入)に計上されたわけである。
通常、1年間に政府の負債を2割も増やせば(日本でいえば180兆円も一気に増やしたようなもの!)普通に考えれば長期金利は上昇するはずだ。
何しろ、市場からアメリカ政府が170兆円もお金を「奪ってしまった」わけである。
政府が100兆円を超えるお金を借りてしまった以上、民間はその金額分「借りられなく」なってしまう。
そうすると、いわゆる「クラウディングアウト」という現象が発生する。
これは政府が大量の国債を発行し、それに伴う金利の上昇で民間が借金をしづらくなり、その結果民間の設備投資などが抑制される現象である。
現実のアメリカ長期金利がどのように推移したのか、図2-1と同じスパンで見てみよう(図2-3)。
アメリカの長期金利は08年第1四半期を「底」に、確かに上昇はしている。
とは図2-2アメリカ連邦政府の財政収支(単位:10億ドル)図2-3アメリカ新発10年物国債金利推移(単位:%)各四半期の金利は、3カ月目の月次数億いえ、未だにリーマン・ショック前の水準であり、サブプライム危機勃発前(要は好景気)の5%前後には、全く届いていない。
アメリカ政府が国債を増発し、政府の負債残高が四半期ごとに過去最高を更新しているにもかかわらず、長期金利がそれほど上昇しないのはなぜだろうか。
もちろん、現在のアメリカは民間の経済主体が揃って負債を減らす局面にあり、そもそも連邦政府(及び地方政府)以外にはまともな借り手(二資金需要)がないためだ。
マネーストックのバブル崩壊以降の日本は、景気対策などで、政府の負債残高が1990年比で3倍超に増えてしまった(図2-4)。
しかし、この期間、長期金利は全く上昇していない。
というよりも、むしろ下がっており、2002年以降は低位安定してしまっている。
つまり、投資効率を市場利子率が上回る恐慌経済下では「クラウディングアウト」は成立しないのである。
なぜならば、クラウディングアウトが成立するには「民間の資金需要がある」という条件が満たされなければならないためだ。
アメリカ国内の資金需要も、バブル崩壊後の日本と極めて類似した状況にある。
民間の各経済主体は、資金需要があるどころか、むしろ「負債を返済したい」わけだ。
現実に、家計や企業の負債残高の減少は続いており、09年第3四半期には、ついに金融機関までもが負債残高を減らしてしまった。
とはいえ、アメリカ連邦政府と日本政府の間には、一つ決定的に異なる点がある。
それは、日本政府が国債の94%を国内で消化しているのに対し、アメリカの場合は国2-4日本の政府負債残高(右軸:10億円)長期金利(左軸:%)の推移7.06.05.04.03.02.01.00.0ほぼ半分が外国で消化しているという点である。
海外投資家(各国の中央銀行を含む)の米国債保有額は、図1-6でも示した通り、09年第3四半期には約3・5兆ドルとなっている。
リーマン・ショック後の増加額を見ると、6970億ドル(約63兆円)と、連邦政府の負債増加分の約36%が「海外投資家頼み」であることがわかる。
ここまでの話を整理すると、以下の通りとなる。
09会計年度(08年10月-09年9月)のアメリカ連邦政府の財政赤字は1・417兆ドル103マネーストックの同期間における、州政府などを含むアメリカ政府全体の負債増加額は1・8907兆ドル同期間の米国債の海外投資家保有残高は、6970億ドル増加(政府の負債増加分の約36%)この期問、アメリカの長期金利の極端な上昇は見られないさて、ここで日本とアメリカ両国の状況について、改めて考えてみたい。
日本の場合は、政府の資金調達(国債発行)のほとんどが国内なので、話が単純だ。
民間の一般企業(非金融法人企業)や家計に資金需要がない中、金融機関の負債は増えていく(我々一般の日本国民や企業が、預金を増やすため)。
それを政府が国債を発行することで借り受ける形になるため、国家のバランスシート上では、家計、非金融法人企業の負債。
減少政府、金融機関の負債。
増加という動きになり、国内でバランスシートがほぼ釣り合うわけだ(対外資産・対外負債分を除く)。
ところが、アメリカの場合は金融機関の負債が横ばいを続けている。
さらに、09年第3四半期には、何と負債残高を減らしてしまっている。
金融機関の負債が増えないということは、バランスシートの負債側の反対にある「資産」も増えないことを意味する。
この場合、増え続ける連邦政府の負債は、果たして「誰が貸したのか」という疑問が生じるわけだ(日本の場合は国内民間経済主体)。
答えはもちろん、日本や中国などの外国人投資家である。
金融機関の負債が増えない分、政府の対外負債が増えることでバランスしているわけである。
家計、非金融法人企業の負債。
減少金融機関。
横ばいもしくは減少政府の負債及び対外負債。
日本の話に戻るが、我が国の長期金利が上がらないのは、金融機関の負債(二我々国民の資産)が増え、「国内で借りられないお金」を政府が借りているためだ。
ところが、アメリカの場合は海外への米国債販売が少なくないため、国内の事情とは無関係に金利が上昇してもおかしくない。
特に、図1-11の通り、中期的、短期的にはドル安が続いている。
海外投資家が「価値が下がり続ける通貨で売買される国債」の購入に遽巡しても、決しておかしくはない状況なのだ。
それでもアメリカ国債の金利が上がらない理由の一つは、08年夏の資源バブル崩壊である。
それまでコモディティ(商品)価格を押し上げていたマネーが、行き場を失ってしまったのである。
世界をさまよう莫大なマネーは、常に何らかの運用先を求めている。
日本の銀行に溢れる我々の預金同様に、世界のマネーの一部がアメリカ国債に流れ込み、国債価格を押し上げた(二金利を押し下げた)わけである。
加えて09年3月18日、FRBは中長期の米国債を6カ月間で最大3000億ドル購入することを決定し、実際に買い切りオペレーション(二中央銀行が無条件で買い入れること)を開始した。
結果、米国債の価値がある程度維持され、金利の引き下げ圧力になり続けたわけだ。
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